学資保険は必要ない?FPが本音で語る「掛け捨て保険+NISA」という選択肢
子どもが生まれると、必ずと言っていいほど勧められるのが学資保険だ。「教育資金の準備といえば学資保険」——そんなイメージを持っている人も多いだろう。
だが、結論から言う。学資保険は必要ない、というのが私の考えだ。
学資保険に限らず、貯蓄型保険全般に同じことが言える。理由はシンプルで、「保障」と「貯蓄」を一つの商品に混ぜた結果、どちらも中途半端になっているからだ。
本記事では、FP資格を持つ筆者が、学資保険を勧めない理由と、代わりになる「掛け捨て保険+NISA」の組み合わせを、具体的な数字とともに解説する。
学資保険とは何か
まず前提を整理しておく。
学資保険とは、子どもの教育資金を準備するための貯蓄型保険だ。毎月保険料を払い込み、子どもの進学時期(多くは18歳前後)に祝金や満期保険金を受け取る。
学資保険の最大のセールスポイントは「保険料払込免除」だ。契約者である親に万一のことがあった場合、それ以降の保険料の支払いは免除され、満期保険金は予定どおり受け取れる。この「万一の保障」と「貯蓄」がセットになっている点が、学資保険が選ばれてきた理由である。
学資保険を勧めない3つの理由
理由1:リターンが低すぎる——返戻率105%の正体
学資保険の損得を測る指標が「返戻率」だ。
返戻率(%)= 受け取る学資金の総額 ÷ 払い込んだ保険料の総額 × 100
2026年現在、学資保険の返戻率はおおむね100〜105%程度が一般的な水準だ。払込期間を10年に短縮するなど条件を工夫すれば110%台に乗る商品もあるが、月払いで18年コツコツ払うような一般的な契約なら、良くて105%前後と考えていい。
「105%なら5%増えるんだからいいじゃないか」と思うかもしれない。だが、ここに落とし穴がある。
返戻率105%とは、18年かけて5%しか増えないという意味だ。年利に換算すればわずか0.3%程度。 2026年現在、メガバンクの1年物定期預金ですら0.4%程度の金利がつく時代に、18年間資金を拘束されてこの利回りである。
例えば月2万円を18年間払い込むと、総額は432万円。返戻率105%なら受取額は約453万円で、増えるのは約21万円だ。18年でプラス21万円。これを「資産形成」と呼べるだろうか。
理由2:インフレに極端に弱い
学資保険は契約時に受取額が固定される。ここが致命的だ。
物価が上がれば、お金の価値は下がる。18年前に決めた「満期200万円」は、18年後には実質的な価値が目減りしている可能性が高い。実際、教育費そのものも上昇傾向にあり、文部科学省の調査では幼稚園から高校まですべて公立でも学習費総額は約614万円に達している。
固定額でしか戻らない学資保険は、インフレ局面では「実質元本割れ」を起こす商品だと理解しておくべきだ。
理由3:途中解約すると元本割れする
学資保険は、途中で解約すると解約返戻金が払込総額を下回るのが普通だ。
18年は長い。住宅購入、転職、収入減——家計の事情はいくらでも変わる。「途中でやめたら損をする」という構造は、家計の柔軟性を著しく奪う。流動性の低さは、それ自体が大きなコストである。
代替案:「掛け捨て保険+NISA」に分解せよ
では、どうすればいいか。答えは、学資保険が一つにまとめている「保障」と「貯蓄」を分解することだ。
万一の備えは「掛け捨ての定期保険」で
学資保険のセールスポイントである「親に万一のことがあっても教育資金が確保される」という機能は、掛け捨ての定期保険(または収入保障保険)で代替できる。
掛け捨て保険は月々数千円程度の保険料で、数千万円規模の死亡保障を確保できる。学資保険の払込免除で守られる金額(せいぜい数百万円)とは、保障の厚みが桁違いだ。しかも保険料が安い分、浮いたお金を運用に回せる。
教育資金は「NISA」で育てる
貯蓄部分はNISAで運用する。長期・積立・分散投資であれば、年利3〜5%程度のリターンは歴史的に十分現実的な水準だ。
ここで先ほどの月2万円×18年(総額432万円)を比較してみよう。
| 準備方法 | 18年後の想定額 | 増加額 |
|---|---|---|
| 学資保険(返戻率105%) | 約453万円 | +約21万円 |
| NISA(年利3%で運用) | 約572万円 | +約140万円 |
| NISA(年利5%で運用) | 約698万円 | +約266万円 |
※NISAは月2万円を毎月積立、複利計算。運用成果を保証するものではない。
年利3%という控えめな想定でも、学資保険との差は約120万円。5%なら約245万円の差になる。これが「18年」という時間を保険会社に預けるか、市場で運用するかの違いだ。
もちろん投資には元本割れリスクがある。だが18年という長期の積立・分散投資は、リスクを時間で平準化できる、最も投資に向いた条件が揃った資金だと言える。
2027年からは「こどもNISA」も始まる
追い風となるニュースがある。2026年度税制改正法の成立により、2027年1月から0〜17歳を対象とした「こどもNISA」が始まることが決まった。
こどもNISAの概要は以下のとおりだ。
- 対象:0〜17歳(子ども名義で口座開設)
- 年間投資枠:60万円、非課税保有限度額:600万円
- 対象商品:つみたて投資枠と同じ、長期積立・分散投資に適した投資信託
- 引き出し:中学校入学年以降、子ども本人の教育費や生活費に使う場合など、条件を満たせば非課税で払い出し可能
- 18歳になると成人のNISA(つみたて投資枠)へ自動移行
かつてのジュニアNISA(2023年末廃止)は「18歳まで原則引き出し不可」「非課税期間5年」という使い勝手の悪さで普及しなかったが、こどもNISAは非課税期間が無期限になり、引き出し制限も緩和された。教育資金づくりの器として大きく進化している。
なお、こどもNISAの開始は2027年1月なので、現時点ではまだ利用できない。今すぐ始めるなら、まず親自身のNISA口座で教育資金分を積み立て、2027年以降に子ども名義のこどもNISAへ移行・併用するのが現実的な進め方だ。 子ども名義の口座に親が資金を入れる場合は、年間110万円の贈与税の基礎控除の範囲内に収めることも覚えておきたい。
それでも学資保険が向いているケース
公平のために書いておくと、学資保険が合理的な選択になる人もいる。
- 投資の値動きに耐えられない人:元本割れの可能性が1%でもあると夜も眠れない、という人には固定額で戻る安心感に価値がある
- 強制力がないと貯められない人:「解約したら損」という縛りが、貯蓄の継続装置として機能する場合がある
- 生命保険料控除を使い切りたい人:2026年分以降、23歳未満の扶養親族がいる世帯は一般生命保険料控除の上限が引き上げられており、節税メリットは若干ある
ただし、これらは「学資保険でなければならない理由」ではなく「学資保険でも許容できる理由」に過ぎない。合理性だけで判断するなら、掛け捨て保険+NISAの組み合わせに軍配が上がる。
よくある質問(FAQ)
Q. 学資保険は元本割れするのか?
A. 満期まで払い込めば、現在の主流商品は返戻率100%を超えるため名目上の元本割れはしない。ただし医療特約などを付けると100%を下回る商品もあり、途中解約すればほぼ確実に元本割れする。また、インフレを考慮すれば実質的な価値は目減りするリスクがある。
Q. NISAで教育資金を準備するリスクは?
A. 元本保証はなく、使いたい時期に相場が下落している可能性がある。対策としては、教育費の全額を投資に頼らず、大学入学の2〜3年前から徐々に現金化していく、児童手当分は預貯金で確保するなど、時期と金額で役割分担することだ。
Q. こどもNISAはいつから始まる?
A. 2027年1月1日開始が決まっている。年間60万円・累計600万円まで非課税で運用でき、対象は0〜17歳。それまでは親のNISA口座で積み立てておけばよい。
Q. すでに学資保険に入っている場合、解約すべきか?
A. 一概には言えない。解約返戻金・残りの払込額・返戻率を確認し、「今解約して確定する損失」と「NISAに切り替えた場合の期待リターン」を比較して判断する。払込済み期間が長い契約は満期まで持った方が有利なケースも多い。判断に迷うならFPなど中立的な専門家に相談してほしい。
まとめ:保険は保険、運用は運用
- 学資保険の返戻率は100〜105%程度。年利換算で0.3%程度と、資産形成の手段としては力不足
- インフレに弱く、途中解約で元本割れするなど、構造的なデメリットが大きい
- 「保障は掛け捨て保険、貯蓄はNISA」に分解すれば、より厚い保障とより大きなリターンの両方を狙える
- 2027年からはこどもNISAが開始。教育資金づくりの環境はさらに整う
保険は「起きたら困ること」に備える道具であり、お金を増やす道具ではない。この原則さえ押さえれば、教育資金の準備で迷うことはなくなるはずだ。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘・推奨を行うものではない。制度内容は2026年7月時点の情報に基づく。最終的な判断はご自身の責任で行っていただきたい。


コメント