いらない保険はどれ?必要な保険は3つだけ【FPが断言】

保険

【結論】 民間保険で加入すべきなのは「掛け捨ての死亡保険」「自動車の対人対物賠償」「火災保険」の3つだけである。これら以外の医療保険、がん保険、貯蓄型保険の多くは、日本の強力な公的保険と少額の貯蓄で十分カバー可能だ。保険料という固定費を削り、その分を貯蓄や投資に回すことこそが、庶民にとって最強のリスク管理となる。2026年8月から高額療養費の上限は多少引き上げられるが、この結論は揺るがない。

保険の本質は「宝くじの逆」である

保険とは本来、発生確率は極めて低いが、万が一発生した際に個人の資産では到底賄えない巨額の損失を補填するための金融商品である。

物流業界に25年身を置いた経験から言わせてもらえば、リスク管理の基本は「発生頻度」と「損失規模」の掛け算だ。例えば、トラックの荷崩れで段ボール数箱が潰れる程度の損害は、保険を使うまでもなく日々の収益でリペア(補填)すればいい。しかし、積み荷が数億円の精密機械で、事故によって会社が倒産しかねないなら、それは保険の出番だ。

個人の家計も全く同じである。日々の通院や数週間の入院でかかる数万〜数十万円程度の費用は、いわば「荷崩れ」と同じ。これを保険で備えようとするのは、発生確率の高い小規模な不運に対して、高い手数料(保険料)を払い続けているに過ぎない。宝くじが「当たれば大きいが期待値はマイナス」なのに対し、多くの民間保険は「起きたら小銭がもらえるが、トータルでは確実に損をする」という、いわば宝くじの逆を行くギャンブルなのだ。

本当のリスク管理とは、自力で払えない事態にだけ、必要最小限のコストを投じることである。何でもかんでも保険で解決しようとする考えは、まず捨てなければならない。

「入るべき保険」と「不要な保険」の一覧

判定保険の種類理由
◎ 必要掛け捨て死亡保険(収入保障保険等)遺族の生活費は貯蓄で賄えない「低確率・大損失」
◎ 必要自動車保険(対人・対物賠償)賠償額が億単位になり得る
◎ 必要火災保険住居喪失は個人の貯蓄で賄えない
× 原則不要医療保険高額療養費制度+貯蓄で対応可能
× 原則不要がん保険標準治療は公的保険の対象
× 原則不要貯蓄型保険(終身・養老・学資等)手数料が高く保険と投資の分離が合理的
× 原則不要民間介護保険公的介護保険+現金が優先

日本の公的保険は世界最強のセーフティネットだ

高額療養費制度とは、1ヶ月(1日〜末日)の医療費の自己負担額が所得に応じた上限を超えた場合、その超過分が払い戻される公的医療保険の仕組みであり、これが民間医療保険の必要性を大幅に下げている。

「入院したら100万円かかるかも」という不安を煽るセールストークをよく耳にするが、実務的に見れば、それは制度を知らない人間の戯言だ。高額療養費制度を使えば、年収約370万〜770万円の現役世代(区分ウ)なら、どれだけ高度な手術や長期入院をしたところで、1ヶ月の自己負担額は約8万7,000円程度で済む。さらに、直近12ヶ月で3回上限に達した後の4回目以降は「多数回該当」となり、上限額は4万4,400円まで下がる。

【2026年8月改正】上限は引き上げ、それでも結論は変わらない

なお、2026年8月の診療分から高額療養費の自己負担上限は引き上げられる。区分ウ(年収約370万〜770万円)で月額プラス5,700円、つまり月約9万3,000円程度になる。2027年8月には所得区分の細分化という第2段階も控えている。一方で、多数回該当の4万4,400円は据え置かれ、長期治療者向けの「年間上限」も新設される。

「ほら、公的保険は当てにならない。だから民間保険だ」という営業トークが増えるだろうが、冷静に数字を見てほしい。月の上限が数千円上がったところで、年間で見れば数万円の負担増だ。そのために月数千円、年間数万円の保険料を一生払い続けるのは本末転倒である。制度の詳細は厚生労働省の高額療養費制度のページで必ず確認してほしい。

つまり、1年間にわたって壮絶な闘病を続けたとしても、純粋な医療費としての自己負担額は100万円もいかないケースがほとんどだ。これに差額ベッド代や食事代を加味しても、200万円程度の貯金があれば、民間保険に入らなくても人生が詰むことはない。物流現場で言えば、予備の車両を1台確保しておくようなものだ。わざわざ高いリース料を払って、使わないかもしれない予備車を10台も契約するバカはいないだろう。

まずは自分の健保組合や国民健康保険の給付内容を公式サイトで確認してほしい。自分が思っている以上に、我々は既に強力な保険に加入させられているのだ。

医療保険が「不要」と言い切れるこれだけの理由

医療保険は、支払う保険料の総額が受け取る給付金の期待値を大きく上回る「期待値マイナス」の商品であり、一定の貯蓄がある世帯には不要だ。

なぜ医療保険が不要なのか、具体的な数字で考えてみよう。例えば、30歳から60歳までの30年間、月々3,000円の医療保険料を払い続けたとする。総支払額は108万円だ。一方、入院日額5,000円の保障を受けて元を取るには、30年間で通算216日以上入院しなければならない。厚生労働省の統計によれば、現代の平均入院日数は短縮傾向にあり、多くの疾患で2週間程度だ。216日入院するには、15回以上の入院を繰り返す必要がある。これがいかに非現実的な数字か、賢明な読者ならわかるはずだ。

さらにタチが悪いのは、保険会社が支払う給付金には「支払限度日数」や「免責期間」という縛りがある点だ。本当に困る長期の療養には対応できず、短期間の入院で数万円もらう程度では、家計の足しにもならない。それなら、月々3,000円を積み立てておいた方が、どんな用途にも使える「生きた金」になる。

唯一の例外は、貯金が100万円未満で、明日入院したら即座に生活が破綻する層だ。しかし、その場合でも保険に入る前に、まずは生活防衛資金を貯めることが先決である。保険は「安心」を買うための道具だが、その代償として「資産形成のスピード」を著しく損なっている事実に目を向けるべきだ。

子育て世代に必要なのは「期間限定の掛け捨て」のみ

家族を持つ現役世代が唯一検討すべき生命保険は、万が一の際に遺族の生活を守るための、期間を区切った「掛け捨て型死亡保険」である。

家計を支える人間に万が一のことがあった場合、残された家族の生活費や子供の教育費は、さすがに数百万の貯金では賄えない。これは「低確率・大損失」の典型例であり、保険で備えるべきリスクだ。ただし、ここでもきれいごとは言わない。必要なのは「掛け捨て」であって、貯蓄型(終身保険や養老保険)ではない。

貯蓄型保険は「保険」と「投資」を混ぜた中途半端な商品だ。保険会社の手数料が抜かれるため、利回りは極めて低く、途中で解約すれば元本割れのリスクもある。物流に例えるなら、トラックの運送契約に、なぜか不動産投資のオプションが付いているようなものだ。運ぶなら運ぶ、増やすなら増やすで、窓口を分けるのが商売の鉄則である。

収入保障保険とは、契約者に万が一のことがあった場合、保険期間の満了まで遺族が毎月一定額(例:月10万円)を受け取れるタイプの掛け捨て死亡保険で、期間の経過とともに保障総額が自然に減っていくため保険料が割安になる。具体的には、子供が大学を卒業するまでの20年程度の期間に限定し、総額1,000万〜2,000万円程度の保障を確保するのが最も効率的だ。これなら月々数千円の保険料で、合理的な備えができる。遺族年金という公的保障も考慮に入れれば、驚くほど高額な保障は必要ないことがわかるはずだ。

固定費削減の最優先事項は特約の全削除だ

保険を見直す際、最も手っ取り早く、かつ効果が高いのは、今入っている保険から「特約」をすべて削ぎ落とすことである。

保険の証券を見てほしい。「先進医療特約」「女性疾病特約」「がん通院特約」……。こうした特約は、保険会社にとっての利益の源泉であり、加入者にとってはコストの塊だ。例えば先進医療特約などは「年間数百円だから」と付加されがちだが、実際に先進医療を受ける確率は極めて低い。そもそも先進医療の技術料そのものは高額療養費制度の対象外だが、診察や検査などの基本部分は保険診療として扱われる。必要なのは、先進医療費という「万が一」に備えることよりも、どんな事態にも対応できる現金を積み上げることだ。

また、古い保険に入りっぱなしの人も要注意だ。昔の医療保険は入院5日目からしか給付されないなど、現代の短期入院メインの医療実態に合っていない。見直しの結論としては、そうした古い保険を更新するのではなく、思い切って解約し、シンプルな掛け捨て保険に一本化するか、貯蓄に回すのが正解だ。

「もしものことがあったらどうするんだ」という不安を煽る言葉に負けてはいけない。本当の不安は、保険料という固定費に家計を圧迫され、老後の資金が足りなくなることの方にあるはずだ。現場主義のFPとして断言する。保険を最小限に絞った人間こそが、最終的に豊かな生活を手に入れられる。

よくある質問(FAQ)

Q1. がん保険も不要ですか?

結論から言えば、不要なケースが大半だ。がんであっても公的保険の「高額療養費制度」は適用される。先進医療や自由診療にこだわりたいなら話は別だが、標準治療の範囲内であれば、貯蓄で十分対応できる。がん保険に月5,000円払うなら、がん検診を毎年しっかり受ける方が、よほど生存率を高める賢い投資と言える。

Q2. 貯蓄型保険を解約すると元本割れしてしまいます。どうすべきですか?

「サンクコスト(埋没費用)」の考え方を持ってほしい。過去に払った金は戻ってこない。重要なのは「これから払う金」をどこに投じれば最大効率になるかだ。元本回復まで10年待つより、今解約して新NISAなどで運用した方が、最終的な資産額が大きくなる可能性が高い。シミュレーションを行い、トータルでの損失が少ない方を選ぶべきだ。

Q3. 民間の介護保険は必要ですか?

介護についても、まずは「公的介護保険」を理解することが先決だ。40歳以上は介護保険料を支払っており、認定を受ければ1〜3割の自己負担でサービスを受けられる。民間の介護保険は支払い基準が厳しく、期待したほど助けにならないことが多い。介護への備えも、やはり「流動性の高い現金」が最強の武器になる。

Q4. 2026年8月の高額療養費の引き上げで、医療保険は必要になりますか?

ならない。引き上げ幅は区分ウで月5,700円、年間ベースでも数万円規模の負担増に過ぎない。多数回該当の4万4,400円は据え置かれ、長期治療者向けの年間上限も新設される。この程度の負担増は保険料ではなく貯蓄の上積みでカバーするのが合理的だ。ただし、2027年8月の所得区分細分化で高所得層の負担はさらに増えるため、自分の区分の上限額は定期的に確認しておくべきだ。


この記事を書いた人:野良FP 物流・トラック業界で25年働きながらFP資格を取得。現場労働者の目線で、きれいごと抜きの資産形成・保険・家計の実務知識を発信している。机上の空論ではなく、限られた時間と収入の中で「庶民が実際に何をすべきか」にこだわる。


※本記事は2026年7月時点の制度に基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や個別の助言を行うものではない。保険の要否は家族構成・貯蓄額・健康状態により異なる。制度の詳細は必ず厚生労働省等の公式情報を確認してほしい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました