年金受給者の節税|214万円まで所得税ゼロ【2026年版】

  1. 結論:非課税ラインは214万円へ。だが申告しなければ返ってこない
    1. この記事でわかること
  2. 【2026年最新】基礎控除104万円。非課税ラインは214万円へ
    1. 基礎控除はこう変わった
    2. 非課税ラインの計算
  3. 【要チェック】12月の年金支払いで精算・還付がある
    1. 令和9年分の「扶養親族等申告書」は10月から届く
  4. 医療費控除は「10万円」ではなく「所得の5%」で考える
    1. 5%ルールの具体例
    2. セルフメディケーション税制との使い分け
  5. 扶養控除の所得要件が62万円に緩和された
    1. 収入別の目安
    2. 要件が緩んでも、申告しなければ恩恵はゼロ
    3. 所得を下げると保険料も下がる連鎖
  6. ふるさと納税を「実益重視」で使い倒す
    1. 注意点は3つ
  7. 「確定申告不要制度」に隠された罠
    1. 確定申告した方がいい人チェックリスト
  8. 年間カレンダー|いつ何をするか
  9. よくある質問(FAQ)
    1. Q1. 年金が年150万円ですが、確定申告は必要ですか?
    2. Q2. 12月の年金が普段より多いのですが、間違いですか?
    3. Q3. 妻もパートで働いていますが、私の扶養に入れることはできますか?
    4. Q4. 非課税ラインが上がったので、もう何もしなくていいですか?
    5. Q5. ふるさと納税をした場合、確定申告は必須ですか?
    6. Q6. 過去の分を申告し忘れていました。今からでも間に合いますか?
    7. Q7. この基礎控除104万円は、ずっと続くのですか?
  10. まとめ
  11. この記事を書いた人
    1. 参考にした一次情報

結論:非課税ラインは214万円へ。だが申告しなければ返ってこない

年金受給者が手元に残る現金を増やすには、天引きされる所得税と住民税をいかに減らすかが鍵となる。 公的年金等控除をベースに、医療費控除、社会保険料控除、扶養控除を漏れなく申告することだ。

そして2026年分(令和8年分)は、基礎控除が最大104万円まで引き上げられ、65歳以上なら年金収入214万円まで所得税がかからない。 日本年金機構も、公的年金の源泉徴収の対象とならない年金額を205万円未満から 214万円未満 へ引き上げると公表している。

さらに実務上、重要な動きがある。令和8年11月の年金支払いまでは改正前の控除額で源泉徴収され、12月の年金支払い時に改正後の額で1年分を精算し、還付すべき金額があれば原則として還付される。 つまり今年は、12月の年金が多くなる人がいる。

この記事でわかること

  • 2026年分の基礎控除104万円と、非課税ライン214万円の内訳
  • 12月の年金支払いで行われる精算・還付の仕組み
  • 医療費控除の「10万円」ではなく 所得の5%ルール の使い方
  • 扶養の所得要件が62万円に緩和(給与のみなら年収136万円以下)
  • 確定申告不要制度に甘えると何を失うのか

【2026年最新】基礎控除104万円。非課税ラインは214万円へ

まず、最も重要な数字から押さえる。

公的年金は雑所得として課税対象になるが、現役時代の給与所得控除にあたる「公的年金等控除」が認められており、さらに各種の所得控除を積み上げることで税負担を最小化できる。

公的年金等控除は、65歳未満なら最低60万円、65歳以上なら最低110万円が年金収入から差し引かれる(年金以外の所得が1,000万円以下の場合)。ここから基礎控除などを引いた残りに課税される。

基礎控除はこう変わった

区分2024年分まで2025年分(令和7年分)2026年分(令和8年分)
基礎控除 本則48万円58万円62万円
特例加算(合計所得489万円以下)なし+37万円+42万円
基礎控除の最大額48万円95万円104万円
公的年金等控除(65歳以上・最低)110万円110万円110万円(変更なし)

令和8年度税制改正により、基礎控除の本則が58万円→62万円へ引き上げられ、令和8年・9年分は合計所得489万円以下の場合に42万円が特例加算される(489万円超655万円以下は5万円加算)。

非課税ラインの計算

年齢計算式所得税の非課税ライン
65歳以上公的年金等控除110万円 + 基礎控除104万円214万円
65歳未満公的年金等控除60万円 + 基礎控除104万円164万円

改正前は110万円+48万円=158万円だった。一気に56万円も上がったことになる。

「年金158万円までは無税」という数年前の記事は、もう当てにならない。

日本年金機構も、公的年金の源泉徴収の対象とならない年金額を 205万円未満から214万円未満(65歳未満は155万円未満から164万円未満)へ引き上げると案内している。

なお、この特例加算(+42万円)は令和8年・令和9年分の措置 とされている。今後、基礎控除等は消費者物価指数を踏まえて2年ごとに見直される仕組みが導入された(次回は令和10年度税制改正で見直し予定)。


【要チェック】12月の年金支払いで精算・還付がある

ここは今年に限った実務上の重要ポイントだ。

令和8年度税制改正による基礎控除の引き上げは、令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税について適用される。 令和8年11月までの源泉徴収事務に変更はない。

日本年金機構によれば、令和8年分の所得税については、令和8年11月の年金支払いまでは改正前の基礎的控除額を用いて源泉徴収を行い、令和8年12月の年金支払い時に、改正後の額で計算した1年分の税額と、すでに源泉徴収した税額との精算を行う。この精算により還付すべき金額が生じる場合には、原則としてその金額を還付する。

つまり 今年12月の年金は、いつもより多い人がいる。 「振込額が違う」と慌てる必要はない。控除が増えた分の精算だ。

令和9年分の「扶養親族等申告書」は10月から届く

もう一つ、スケジュールを押さえておきたい。日本年金機構は、65歳以上で年金額148万円以上、65歳未満で年金額98万円以上の人に対し、令和9年分の「扶養親族等申告書」を令和8年10月から順次送付する。

この書類を出さないと、扶養控除などが源泉徴収に反映されない。届いたら必ず返送すること。 後回しにすると翌年の天引きが多くなる。


医療費控除は「10万円」ではなく「所得の5%」で考える

医療費控除とは、1年間に支払った生計を一にする家族全員分の医療費が一定額を超えた場合に、その超過分を所得から差し引ける制度である。 年金受給者にとって最も効果を実感しやすい節税手段だ。

一般的に「10万円超」と言われるが、総所得金額等が200万円未満の場合は「所得の5%」を超えれば対象になる。 年金受給者はこの5%ルールに該当することが多い。

5%ルールの具体例

年金収入200万円の場合を計算してみよう。

項目金額
年金収入200万円
公的年金等控除−110万円
雑所得(総所得金額等)90万円
その5%4万5,000円

つまり医療費が4万5,000円を超えれば控除の対象になる。 10万円という数字だけを覚えていると、大きな取りこぼしになる。

通院のための交通費(電車・バス、症状により必要なタクシー)も対象に含まれる。領収書が出ない支出もメモを残しておくのが、物流屋的な「現場の管理」というものだ。

セルフメディケーション税制との使い分け

市販薬の購入が多い場合は セルフメディケーション税制 の検討も必要だ。対象のスイッチOTC医薬品等を年間1万2,000円超購入すれば、超過分(上限8万8,000円)が所得控除になる。

ただし 健康診断や予防接種を受けていることが条件で、従来の医療費控除との併用はできない。

状況選ぶべき制度
大きな手術や長期入院があった年医療費控除
日々の健康管理で薬局を多用する年セルフメディケーション税制

扶養控除の所得要件が62万円に緩和された

配偶者控除や扶養控除を適切に申告することは、所得税だけでなく住民税や介護保険料の算定にも影響を与える強力な武器となる。

そして、ここも数字が変わっている。基礎控除の引き上げに伴い、扶養控除・配偶者控除の対象となる同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件が、58万円以下から62万円以下に引き上げられた(令和8年分から)。

収入別の目安

扶養に入れたい人の収入2026年分の目安
給与収入のみ年収136万円以下(給与所得控除74万円+所得要件62万円)
年金収入のみ(65歳以上)年金収入172万円以下(公的年金等控除110万円+所得要件62万円)
年金収入のみ(65歳未満)年金収入122万円以下

※令和8年分の所得税では、給与所得控除の最低保障額も74万円に引き上げられている。いわゆる「年収の壁」が160万円から178万円になったのはこのためだ。

夫婦ともに年金受給者の場合、妻が65歳以上なら年金収入172万円以下であれば、夫側で配偶者控除が受けられる計算 になる。改正前の「158万円以下」から大きく緩和された。

要件が緩んでも、申告しなければ恩恵はゼロ

日本年金機構も、令和8年分の所得税において新たに扶養親族等の要件を満たすようになった人が控除を受けるには、原則として確定申告が必要だと案内している。

要件が緩んだのに手続きをしなければ、恩恵はゼロだ。 ここを取りこぼしている人は相当いるはずだ。

所得を下げると保険料も下がる連鎖

重要なのは、所得税の還付だけが目的ではない という点だ。所得控除によって住民税が非課税になれば、介護保険料や国民健康保険料の負担が大きく下がる可能性がある。

物流で言えば、高速料金を節約するためにルートを見直すようなものだ。所得を数万円減らすだけで、保険料の段階が一つ下がり、年間の負担が変わることもある。

「うちは関係ない」と決めつけず、控除できる家族がいないか洗い出してみることだ。別居している親に仕送りをしている場合や、収入の少ない子を養っている場合も扶養控除の対象になり得る。


ふるさと納税を「実益重視」で使い倒す

ふるさと納税とは、自治体への寄付額のうち2,000円を超える部分が所得税・住民税から控除される制度であり、実質2,000円の負担で返礼品を受け取れる仕組みである。

年金受給者でも、所得税や住民税を納めているのであればメリットを享受できる。狙うべきは工芸品や体験ではない。米、トイレットペーパー、洗剤といった生活必需品だ。 これを返礼品でもらうことで、生活費という固定費を削る。物流のコストカットと同じで、変動費より固定費に手を入れるのが王道である。

注意点は3つ

  1. 限度額が現役世代より低い。 公的年金等控除がある分、同じ収入の給与所得者より寄付できる上限額は少なくなる。シミュレーションサイトで自分の年金収入を入力し、正確な上限を把握すること
  2. そもそも税金を納めていなければ意味がない。 2026年分は非課税ラインが214万円まで上がったため、年金収入がこれ以下なら控除される税金自体が存在しない。 この場合は「ただの寄付」になる
  3. 仲介サイトのポイント付与は2025年10月から禁止されている。 「ポイント込みでお得」という古い情報は当てにならない

上限を超えて寄付すれば、それは気前のいい寄付になってしまう。積載重量オーバーで過積載を取られるのと同じ、計算ミスは致命的だと心得よう。


「確定申告不要制度」に隠された罠

確定申告不要制度とは、公的年金等の収入が400万円以下で、それ以外の所得が20万円以下であれば所得税の確定申告をしなくてよいという制度である。

だがこれは 「申告しなくていい権利」であって「申告しない方が得」という意味ではない。

この制度があるせいで、多くの高齢者が還付の機会を逃している。年金から天引き(源泉徴収)されている所得税は、あくまで概算だ。 医療費控除や生命保険料控除、地震保険料控除などは、天引きの段階では考慮されていない。

つまり確定申告をしないということは、預けすぎた税金をそのままにしているのに等しい。

還付金が数千円だったとしても、住民税の算定根拠が下がることで、前述した保険料の減額に繋がる連鎖反応が起きる。物流のラストワンマイルを丁寧に進めるように、税金も最後の手続きまで気を抜いてはいけない。

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確定申告した方がいい人チェックリスト

  • 年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えた
  • 生命保険料・地震保険料を払っているが源泉徴収に反映されていない
  • 扶養できる家族が新たにできた、または要件緩和(62万円)で対象になった
  • 国民健康保険料・介護保険料を自分で納付している
  • ふるさと納税をした
  • 年の途中で退職した、または医療費が急に増えた年がある

一つでも当てはまるなら、申告する価値がある。


年間カレンダー|いつ何をするか

時期やること
2026年10月〜日本年金機構から令和9年分「扶養親族等申告書」が届く。必ず返送
2026年12月年金支払い時に改正後の控除額で1年分を精算。還付が生じる場合あり
12月31日ふるさと納税の寄付締切/医療費の集計締め
翌年1月〜源泉徴収票・医療費の領収書を集める
翌年2〜3月確定申告(医療費控除・扶養控除・ふるさと納税など)

よくある質問(FAQ)

Q1. 年金が年150万円ですが、確定申告は必要ですか?

65歳以上であれば、公的年金等控除110万円と基礎控除(2026年分は最大104万円)の合計 214万円以下なので所得税は発生しない。 ただし 住民税は所得税と基準が異なり、自治体によっては課税される場合がある。 また医療費控除などで住民税を下げられる可能性があるため、住民税の申告が有効なケースもある。詳細は市区町村へ確認してほしい。

Q2. 12月の年金が普段より多いのですが、間違いですか?

間違いではない可能性が高い。令和8年11月の年金支払いまでは改正前の控除額で源泉徴収され、12月の年金支払い時に改正後の額で1年分を精算する 仕組みになっている。この精算で還付すべき金額が生じる場合は、原則としてその金額が還付される。基礎控除が大きく上がった年なので、還付が出る人は少なくない。

Q3. 妻もパートで働いていますが、私の扶養に入れることはできますか?

2026年分から、配偶者控除の対象となる合計所得金額の要件は 62万円以下 に引き上げられた。給与収入だけなら年収136万円以下が目安 だ(給与所得控除の最低保障額も74万円に引き上げられたため)。これを超えても一定額までは配偶者特別控除が段階的に受けられる。妻が65歳以上で年金を受け取っている場合は 年金収入172万円以下 が目安になる。年金と給与の両方がある場合は合算して判定するため、源泉徴収票を突き合わせて確認することだ。

Q4. 非課税ラインが上がったので、もう何もしなくていいですか?

年金収入が214万円以下なら所得税はかからないが、それで終わりではない。住民税は別基準で課税される可能性があるほか、国民健康保険料や介護保険料は所得に応じて決まる。 また、非課税ラインを超える人にとっては控除の積み上げによる還付の余地が依然として大きい。「所得税ゼロ」と「負担ゼロ」は別物 だと理解しておきたい。

Q5. ふるさと納税をした場合、確定申告は必須ですか?

確定申告を行う場合は ワンストップ特例が無効になる ため、寄付金控除として申告書に記載する必要がある。医療費控除を受けるために申告するなら、ふるさと納税も一緒にまとめなければならない。二度手間にならないよう、書類は一箇所にまとめておくこと。

Q6. 過去の分を申告し忘れていました。今からでも間に合いますか?

還付申告なら、対象となる年の翌年1月1日から5年間さかのぼって申告できる。 医療費が嵩んだ年や、控除の申告を忘れた年があれば、今からでも取り戻せる可能性がある。領収書や源泉徴収票が残っているか、まずは確認してみてほしい。

Q7. この基礎控除104万円は、ずっと続くのですか?

特例加算(+42万円)は令和8年・令和9年分の措置 とされている。本則の62万円については、消費者物価指数の動きを反映して 2年ごとに自動調整する仕組み が導入され、次回は令和10年度税制改正で見直される予定だ。「214万円」という数字は固定ではない ため、毎年の改正情報は確認しておきたい。


まとめ

年金生活における節税は、派手なテクニックではない。公的年金等控除をベースに、医療費、社会保険料、扶養といった当たり前の控除を一つひとつ積み上げていく泥臭い作業だ。

そして2026年は、制度が味方をしてくれる年でもある。基礎控除は104万円に拡大し、非課税ラインは214万円へ。扶養の所得要件も62万円に緩和され、12月の年金支払いでは精算と還付が行われる。

ただし、制度が変わっても、申告しなければ1円も返ってこない。

物流業界で25年、コスト削減の現場を見てきた私から言わせれば、1円の無駄を削れない者に大きな利益は残せない。 確定申告不要制度に甘んじず、自分の権利を正しく行使して、手元に残る「使える現金」を死守してほしい。


この記事を書いた人

野良FP 物流・トラック業界で25年働きながらFP資格を取得。現場労働者の目線で、きれいごと抜きの資産形成・保険・家計の実務知識を発信している。机上の空論ではなく、限られた時間と収入の中で「庶民が実際に何をすべきか」にこだわる。

参考にした一次情報


※本記事は2026年9月4日時点の情報に基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談に応じるものではない。基礎控除の特例加算など、期間限定の措置が含まれる。住民税の非課税基準は自治体の級地区分により異なる。適用にあたっては必ず国税庁・日本年金機構の公式情報を確認するか、税務署・市区町村・税理士に相談してほしい。

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