年金受給者の節税|214万円まで所得税ゼロ【2026年版】

【結論】 年金受給者が手元に残る現金を増やすには、天引きされる所得税と住民税をいかに減らすかが鍵となる。具体的には、公的年金等控除をベースに、医療費控除、社会保険料控除、扶養控除を漏れなく申告することだ。しかも2026年分は基礎控除が大幅に引き上げられ、65歳以上なら年金収入214万円まで所得税がかからない。「確定申告不要制度」に甘えて申告を放棄すると、還付されるはずの税金をドブに捨てることになる。

年金にかかる税金の仕組みと控除の重要性

公的年金は「雑所得」として課税対象になるが、現役時代の給与所得控除にあたる「公的年金等控除」が認められており、さらに各種の所得控除を積み上げることで税負担を最小化できる。

物流の現場でいえば、積載効率を上げずにトラックを走らせるのが一番の無駄だ。年金も同じで、何も対策をしなければ引かれるに任せるだけである。

まず基本を押さえよう。公的年金等控除は、65歳未満なら最低60万円、65歳以上なら最低110万円が年金収入から差し引かれる(年金以外の所得が1,000万円以下の場合)。ここから、さらに基礎控除などの所得控除を引いた残りに課税される。

【2026年最新】基礎控除が104万円に。非課税ラインは214万円へ

ここが本記事で最も重要な点だ。基礎控除は令和7年度・令和8年度と2年連続で引き上げられ、2026年分(令和8年分)は最大104万円になっている。

区分2024年分まで2026年分(令和8年分)
基礎控除(本則)48万円62万円
特例加算(合計所得489万円以下)なし+42万円(計104万円)
公的年金等控除(65歳以上・最低)110万円110万円(変更なし)

つまり、65歳以上で年金収入のみの人の所得税の非課税ラインは、こう変わった。

  • 改正前:110万円+48万円=158万円
  • 2026年分:110万円+104万円=214万円

一気に56万円も上がったことになる。65歳未満なら60万円+104万円=164万円が目安だ。「年金158万円までは無税」という数年前の記事は、もう当てにならない。

なお、この特例加算(+42万円)は令和8年・令和9年分の措置とされている。また、住民税の非課税基準は所得税とは別で、お住まいの自治体の級地区分によって異なる。所得税がゼロでも住民税がかかるケースはあるので、市区町村への確認は必須だ。

この金額を超えると所得税が引かれ始める。そこで重要になるのが「所得控除」の積み上げだ。社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除など、現役時代に使っていた制度の多くは年金受給者になっても継続して利用できる。

医療費控除とセルフメディケーション税制の戦略的活用

医療費控除とは、1年間に支払った生計を一にする家族全員分の医療費が一定額を超えた場合に、その超過分を所得から差し引ける制度であり、年金受給者にとって最も効果を実感しやすい節税手段である。

一般的に「10万円超」と言われるが、総所得金額等が200万円未満の場合は「所得の5%」を超えれば対象になる。年金受給者はこの5%ルールに該当することが多いため、10万円に届かなくても諦めてはいけない。

例えば年金収入200万円なら、雑所得は90万円(200万-110万)。その5%は4万5,000円だ。つまり、医療費が4万5,000円を超えれば控除の対象になる。10万円という数字だけを覚えていると、大きな取りこぼしになる。

通院のための交通費(電車・バス、症状により必要なタクシー)も対象に含まれるため、領収書が出ない支出もメモを残しておくのが物流屋的な「現場の管理」というものだ。

また、市販薬の購入が多い場合は「セルフメディケーション税制」の検討も必要だ。対象のスイッチOTC医薬品等を年間1万2,000円超購入すれば、超過分(上限8万8,000円)が所得控除になる。ただし健康診断や予防接種を受けていることが条件で、従来の医療費控除との併用はできない。基本的には、大きな手術や長期入院があった年は医療費控除、日々の健康管理で薬局を多用する年はセルフメディケーション税制という使い分けになる。

家族を扶養に入れることで住民税と保険料を抑える方法

配偶者控除や扶養控除を適切に申告することは、所得税だけでなく住民税や介護保険料の算定にも影響を与える強力な武器となる。

【2026年改正】扶養の所得要件が62万円に緩和された

ここも数字が変わっている。基礎控除の引き上げに伴い、扶養控除・配偶者控除の対象となる親族の所得要件が、合計所得金額58万円以下から62万円以下に引き上げられた(2026年分から)。給与収入だけなら年収123万円以下が目安だ。

夫婦ともに年金受給者の場合はどうか。妻が65歳以上なら、公的年金等控除110万円を引いた後の所得が62万円以下、つまり年金収入172万円以下であれば、夫側で配偶者控除が受けられる計算になる。これも改正前の「158万円以下」から大きく緩和された。

日本年金機構も、2026年分で新たに扶養親族等の要件を満たすようになった人が控除を受けるには、原則として確定申告が必要だと案内している。要件が緩んだのに手続きをしなければ、恩恵はゼロだ。

所得を下げると保険料も下がる連鎖

ここで重要なのは、所得税の還付だけが目的ではないという点だ。所得控除によって住民税が非課税になれば、介護保険料や国民健康保険料の負担が大きく下がる可能性がある。物流で言えば、高速料金を節約するためにルートを見直すようなものだ。

所得を数万円減らすだけで、保険料の段階が一つ下がり、年間の負担が変わることもある。「うちは関係ない」と決めつけず、控除できる家族がいないか洗い出してみることだ。別居している親に仕送りをしている場合や、収入の少ない子を養っている場合も扶養控除の対象になり得る。

ふるさと納税を「実益重視」で使い倒す実務

ふるさと納税とは、自治体への寄付額のうち2,000円を超える部分が所得税・住民税から控除される制度であり、実質2,000円の負担で返礼品を受け取れる仕組みである。

年金受給者でも、所得税や住民税を納めているのであれば、メリットを享受できる。狙うべきは、工芸品や体験ではない。米、トイレットペーパー、洗剤といった「生活必需品」だ。これを返礼品でもらうことで、生活費という固定費を削る。物流のコストカットと同じで、変動費より固定費に手を入れるのが王道である。

注意点は3つある。

  1. 限度額が現役世代より低い。公的年金等控除がある分、同じ収入の給与所得者より寄付できる上限額は少なくなる。シミュレーションサイトで自分の年金収入を入力し、正確な上限を把握すること
  2. そもそも税金を納めていなければ意味がない。前述の通り2026年分は非課税ラインが214万円まで上がったため、年金収入がこれ以下なら控除される税金自体が存在しない。この場合は「ただの寄付」になる
  3. 仲介サイトのポイント付与は2025年10月から禁止されている。「ポイント込みでお得」という古い情報は当てにならない

上限を超えて寄付すれば、それは気前のいい寄付になってしまう。積載重量オーバーで過積載を取られるのと同じ、計算ミスは致命的だと心得よう。

「年金受給者の確定申告不要制度」に隠された罠

確定申告不要制度とは、公的年金等の収入が400万円以下で、それ以外の所得が20万円以下であれば所得税の確定申告をしなくてよいという制度だが、これは「申告しなくていい権利」であって「申告しない方が得」という意味ではない。

この制度があるせいで、多くの高齢者が還付の機会を逃している。年金から天引き(源泉徴収)されている所得税は、あくまで概算だ。医療費控除や生命保険料控除、地震保険料控除などは、天引きの段階では考慮されていない。つまり、確定申告をしないということは、預けすぎた税金をそのままにしているのに等しい。

還付金が数千円だったとしても、住民税の算定根拠が下がることで、前述した保険料の減額に繋がる連鎖反応が起きる。物流のラストワンマイルを丁寧に進めるように、税金も最後の手続きまで気を抜いてはいけない。

マイナンバーカードを使ったe-Taxなら、自宅からスマホ一つで完結する。慣れれば配送伝票を書くより簡単だ。詳しくは国税庁の高齢者と税のページを確認してほしい。

確定申告した方がいい人チェックリスト

  • 年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えた
  • 生命保険料・地震保険料を払っているが源泉徴収に反映されていない
  • 扶養できる家族が新たにできた、または要件緩和で対象になった
  • 国民健康保険料・介護保険料を自分で納付している
  • ふるさと納税をした
  • 年の途中で退職した、または医療費が急に増えた年がある

一つでも当てはまるなら、申告する価値がある。

まとめ

年金生活における節税は、派手なテクニックではない。公的年金等控除をベースに、医療費、社会保険料、扶養といった当たり前の控除を一つひとつ積み上げていく泥臭い作業だ。

そして2026年は、制度が味方をしてくれる年でもある。基礎控除は104万円に拡大し、非課税ラインは214万円へ。扶養の所得要件も62万円に緩和された。ただし、制度が変わっても、申告しなければ1円も返ってこない

物流業界で25年、コスト削減の現場を見てきた私から言わせれば、1円の無駄を削れない者に大きな利益は残せない。確定申告不要制度に甘んじず、自分の権利を正しく行使して、手元に残る「使える現金」を死守してほしい。

よくある質問(FAQ)

Q1:年金が年150万円ですが、確定申告は必要ですか?

65歳以上であれば、公的年金等控除110万円と基礎控除(2026年分は最大104万円)の合計214万円以下なので、所得税は発生しない。ただし住民税は所得税と基準が異なり、自治体によっては課税される場合がある。また医療費控除などで住民税を下げられる可能性があるため、住民税の申告が有効なケースもある。詳細は市区町村へ確認してほしい。

Q2:妻もパートで働いていますが、私の扶養に入れることはできますか?

2026年分から、配偶者控除の対象となる合計所得金額の要件は62万円以下に引き上げられた。給与収入だけなら年収123万円以下が目安だ。これを超えても一定額までは配偶者特別控除が段階的に受けられる。妻が65歳以上で年金を受け取っている場合は、年金収入172万円以下が目安になる。年金と給与の両方がある場合は合算して判定するため、源泉徴収票を突き合わせて確認することだ。

Q3:ふるさと納税をした場合、確定申告は必須ですか?

確定申告を行う場合は「ワンストップ特例」が無効になるため、寄付金控除として申告書に記載する必要がある。医療費控除を受けるために申告するなら、ふるさと納税も一緒にまとめなければならない。二度手間にならないよう、書類は一箇所にまとめておくこと。

Q4:非課税ラインが上がったので、もう何もしなくていいですか?

年金収入が214万円以下なら所得税はかからないが、それで終わりではない。住民税は別基準で課税される可能性があるほか、国民健康保険料や介護保険料は所得に応じて決まる。また、非課税ラインを超える人にとっては、控除の積み上げによる還付の余地が依然として大きい。「所得税ゼロ」と「負担ゼロ」は別物だと理解しておきたい。

Q5:過去の分を申告し忘れていました。今からでも間に合いますか?

還付申告なら、対象となる年の翌年1月1日から5年間さかのぼって申告できる。医療費が嵩んだ年や、控除の申告を忘れた年があれば、今からでも取り戻せる可能性がある。領収書や源泉徴収票が残っているか、まずは確認してみてほしい。


この記事を書いた人:野良FP 物流・トラック業界で25年働きながらFP資格を取得。現場労働者の目線で、きれいごと抜きの資産形成・保険・家計の実務知識を発信している。机上の空論ではなく、限られた時間と収入の中で「庶民が実際に何をすべきか」にこだわる。


※本記事は2026年7月時点の情報に基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談に応じるものではない。基礎控除の特例加算など、期間限定の措置が含まれる。住民税の非課税基準は自治体により異なる。適用にあたっては必ず国税庁の公式情報を確認するか、税務署・市区町村・税理士に相談してほしい。

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